HubSpotとSalesforce、BtoB企業に合うのはどっち?

デジタルシフトが加速する現代において、BtoB企業にとってマーケティング、営業、顧客管理の各プロセスを最適化するツール選定は、事業成長を左右する重要な経営判断となります。特に、HubSpotとSalesforceは、BtoB企業のDX推進において中心的な役割を果たす2大プラットフォームとして知られています。
HubSpotとSalesforceの基本概要:BtoB企業向けの特徴
まず、両プラットフォームがBtoB企業にとってどのような特徴を持つのかを理解することが重要です。
・HubSpotとは?中小企業・マーケティング初心者に最適なオールインワンツール
HubSpotは、マーケティング、営業、カスタマーサービス、CMSなど、企業の顧客関係管理(CRM)に必要な機能をオールインワンで提供するプラットフォームです。このツールの大きな特徴は、直感的な操作性と導入のしやすさにあります。そのため、中小企業や初めてMA/SFA/CRMを導入するBtoB企業に適していると言えるでしょう。統合された顧客データにより、顧客情報を一元管理し、マーケティングから営業、カスタマーサービスまでシームレスな連携を実現します。また、使いやすいユーザーインターフェース(UI/UX)により、専門知識がなくても操作しやすく、内製での運用を促進します。特に、ブログ、SEO、SNS連携など、リード獲得から育成までを効率化するインバウンドマーケティングに強みを持っています。
このため、HubSpotは、これからデジタルマーケティングを本格化させたい企業、社内でツール運用を完結させたい中小企業、そしてマーケティングと営業の連携を強化したいBtoB企業に特におすすめです。
・Salesforceとは?大企業・複雑な業務プロセスに対応する拡張性の高いプラットフォーム
Salesforceは、世界トップシェアを誇るクラウドベースのCRMプラットフォームです。営業支援(SFA)から顧客管理(CRM)、マーケティング、サービスまで幅広いソリューションを提供しており、その最大の特徴は高いカスタマイズ性と拡張性にあります。複雑な業務プロセスを持つ大企業やグローバル企業での導入実績が豊富です。圧倒的なカスタマイズ性により、自社の複雑な商習慣や業務フローに合わせてシステムを柔軟に構築・調整できます。さらに、AppExchangeを通じた数千もの外部アプリ連携により、機能を無限に拡張可能です。大規模なユーザー数や膨大なデータ量にも安定して対応できるため、その対応力も強みと言えます。
したがって、Salesforceは、既存の複雑な業務プロセスをシステムに合わせたい大企業、特定の業界に特化した機能が必要な企業、そして将来的な事業拡大やグローバル展開を見据えているBtoB企業に適しています。
機能比較:BtoB企業の主要業務における両者の違い
BtoB企業が特に重視するマーケティング、営業、顧客管理、データ分析の4つの側面から、HubSpotとSalesforceの具体的な機能と得意分野を比較していきます。
マーケティングオートメーション(MA)機能
HubSpotは、ブログ、ランディングページ作成、メール配信、SEOツール、SNS管理など、インバウンドマーケティングに必要な機能を網羅的に提供します。リードのスコアリングやセグメンテーションが容易で、リード育成の自動化に強みを発揮し、マーケティング施策と営業活動の連携もスムーズです。
一方、Salesforceは「Marketing Cloud」として提供され、大規模なキャンペーン管理やパーソナライズされた顧客体験の提供に特化しています。BtoC領域での大規模な顧客エンゲージメントにも対応できる高度な機能を持つほか、外部ツールとの連携により、より高度な分析やセグメンテーションが可能となります。
営業支援(SFA)機能
HubSpotは、リード管理、パイプライン管理、見積書作成、会議予約、営業メールトラッキングなど、営業活動の効率化に直結する機能を提供しています。営業担当者が使いやすいシンプルなUIを備えており、CRMへの情報入力の習慣化を促進します。
対照的に、Salesforceは「Sales Cloud」として、リード・商談管理、活動履歴、予測分析、レポート作成など、営業プロセスの可視化と最適化を強力にサポートします。複雑な承認プロセスや階層構造を持つ営業組織にも柔軟に対応でき、AIを活用した商談インサイト提供など、高度な分析機能も充実しています。
顧客管理(CRM)機能
HubSpotは、シンプルで直感的な顧客データベースを提供します。顧客とのすべてのインタラクション(メール、電話、チャットなど)をタイムラインで表示し、顧客理解を深めることを可能にします。また、カスタマーサービス機能(Service Hub)も統合されており、顧客ロイヤルティ向上に貢献します。
Salesforceでは、顧客データの一元管理はもちろんのこと、豊富なカスタムフィールドやオブジェクト機能により、あらゆる顧客情報を詳細に管理できます。他システムとの連携により、顧客情報に基づいた複合的な分析や活用も可能です。
データ分析・レポート機能
HubSpotは、直感的なダッシュボードで、マーケティングや営業活動の成果をリアルタイムで可視化します。定型レポートが豊富に用意されているため、手軽に主要なパフォーマンス指標(KPI)を把握できるでしょう。
一方、Salesforceは、強力なレポート作成機能とダッシュボードによって、多角的な視点から詳細なデータ分析を可能にします。「Einstein Analytics(旧Tableau CRM)」のようなAIを活用した高度な予測分析やインサイト提供にも対応しています。
導入・運用体制と費用:BtoB企業が考慮すべきポイント
ツール選定において、費用だけでなく、導入後の運用体制も重要な要素となります。
導入コストと運用体制
HubSpotは、初期費用を抑えやすく、中小企業でも導入しやすい価格体系が特徴です。内製での運用が中心となるケースが多く、トレーニングやサポートはHubSpot Academyなどのオンラインリソースが充実しています。比較的短期間での導入・運用開始が可能です。
対してSalesforceは、機能が豊富な分、HubSpotと比較して初期費用や月額費用が高くなる傾向にあります。複雑なカスタマイズが必要な場合、SIerやコンサルティングパートナーとの連携が一般的です。大規模な導入プロジェクトになることが多く、導入から運用開始までにある程度の期間を要します。
データ連携と拡張性
HubSpotは、主要なクラウドツール(Slack, Zapier, Zoomなど)とのシームレスな連携に強みを持っています。APIも公開されており、開発による連携も可能です。必要最小限の機能に絞りつつ、外部ツールで補完する運用がしやすいでしょう。
Salesforceは、AppExchangeを通じて数千以上のサードパーティアプリと連携可能です。APIを介した外部システム連携や、独自の開発プラットフォーム(Apex, Lightning)により、圧倒的な自由度と拡張性を実現します。
BtoB企業の導入成功事例から学ぶ:HubSpotとSalesforceの選び方
実際のBtoB企業の導入事例を通して、両ツールの適性を見ていきましょう。
HubSpot導入成功事例
製造業A社(従業員50名)の事例では、導入前の属人的な営業活動やマーケティング施策の不足という課題がありました。HubSpot Marketing Hubの導入により、Webサイトからのリード獲得数が3倍に増加し、Sales Hubとの連携でリードから商談への転換率が向上、受注率が20%改善しました。マーケティングと営業の連携がスムーズになり、部門間の情報共有も活性化されたのです。
また、専門商社B社(従業員100名)の事例では、顧客情報の分散や既存顧客へのアプローチ不足が課題でした。HubSpot CRMを基盤にMAとSFAを導入した結果、既存顧客へのパーソナライズされた情報提供が可能になり、クロスセル・アップセル機会が創出されました。顧客満足度も向上し、長期的な関係構築に成功しています。
Salesforce導入成功事例
大手ITサービス企業C社(従業員1,000名)の事例では、複数のシステムが乱立し、営業活動の全体像が見えないという課題がありました。Salesforce Sales Cloudの全社導入により、営業活動の可視化と標準化が実現し、営業プロセスが均一化され、属人性が解消されました。経営層はリアルタイムで営業状況を把握できるようになり、迅速な意思決定が支援されたのです。
さらに、製造業D社(従業員500名、グローバル展開)の事例では、各拠点での情報が分断され、グローバルでの連携が困難でした。Salesforce Service Cloudを導入し、国内外の顧客サポート情報を一元管理した結果、顧客からの問い合わせ対応が効率化され、サービス品質が向上しました。グローバルでの営業・サポート活動の一元管理により、データに基づいた戦略立案が可能になりました。
BtoB企業がHubSpotとSalesforceを選ぶ際の最終チェックリスト
HubSpotとSalesforce、どちらを選ぶべきかは、単純な機能比較だけでは判断できません。自社のビジネス特性や将来のビジョンに合致するかを深く検討することが重要です。
まず、企業の規模と成長フェーズを考慮しましょう。小規模から中規模でこれからデジタルシフトを加速させたい、あるいは内製での運用を重視するなら、HubSpotが適しています。一方、中規模から大規模で、複雑な業務プロセスを持ち、将来的な拡張性やカスタマイズ性を重視するなら、Salesforceが選択肢となるでしょう。
次に、導入目的と求める機能を明確にします。マーケティング活動の効率化やインバウンド施策強化が主目的ならHubSpotが有力です。しかし、営業プロセスの複雑な管理、詳細な顧客データ分析、高度なカスタマイズが必須ならSalesforceの検討が必要です。
さらに、予算と導入・運用体制も重要な要素です。初期費用を抑えたい、または内製での運用を希望するならHubSpotが良いでしょう。一方で、システム投資をいとわず、SIerやパートナーと連携して大規模なシステム構築を行う場合はSalesforceが適しています。
最後に、既存システムとの連携についても確認が必要です。主要なクラウドツールとのスムーズな連携を手軽に実現したいならHubSpotが便利です。しかし、既存の基幹システムや独自開発システムとの複雑な連携や深いカスタマイズが必要な場合はSalesforceが有利です。
最適なツール選定でBtoB企業の成長を加速
HubSpotとSalesforceは、それぞれ異なる強みを持つ優れたプラットフォームです。最も重要なのは、自社の現状の課題、目指す姿、そして具体的な運用体制を明確にした上で、最適なツールを選定することです。
BBマーケティングでは、BtoB企業のDX推進を支援するため、HubSpotやSalesforceの導入コンサルティングも行っております。どちらのツールが自社に最適かお悩みでしたら、ぜひ一度ご相談ください。貴社のビジネス成長に貢献できるよう、最適なソリューションをご提案いたします。