【9セグマップ】顧客理解を深め、成果を最大化する戦略的活用法

顧客の「今」を見える化する9セグマップとは?
WebマーケティングやCRM戦略を推進する上で、顧客を深く理解することは必要不可欠です。しかし、顧客の行動や状態は一律ではありません。購入頻度が高い優良顧客、一度離れてしまった離反顧客、これから育成が必要な見込み顧客など、多様な顧客が混在しています。これらの顧客をひとまとめにして同じアプローチを繰り返しても、効果は限定的になってしまいます。
そこで有効な手法として注目されているのが、「9セグマップ」です。9セグマップとは、顧客を育成やアプローチの観点から戦略的に分類するためのフレームワークです。具体的には、「ロイヤリティ(購買金額や購入頻度など)」と「活動頻度(サイト訪問頻度やメルマガ開封率など)」の2軸を用い、それぞれの軸を「高い」「中程度」「低い」の3段階に分け、合計9つの顧客セグメントに分類します。
この9つのセグメントに分けることで、顧客が「現在どのような状態にあるのか」、そして「次にどのようなアクションを起こしてもらうべきか」が明確になります。顧客全体を俯瞰し、それぞれのグループに対してパーソナライズされた適切なコミュニケーション戦略を設計するための、極めて実用的なツールと言えます。単に顧客データを眺めるだけでなく、データに戦略的な意味を持たせ、具体的な施策へと繋げられる点が、9セグマップの最大の特長です。
9セグマップを構成する2つの評価軸の考え方
9セグマップを正確に活用するためには、その基礎となる2つの評価軸、ロイヤリティと活動頻度の定義を深く理解することが重要です。この2軸の設定こそが、顧客像を立体的に捉える鍵となります。
ロイヤリティ軸(LTV/購買行動の貢献度)
ロイヤリティ軸は、顧客が企業に対してどれだけ貢献しているか、あるいは愛着を持っているかを示す指標です。ECサイトや実店舗ビジネスにおいては、一般的に「購買金額の総額(LTV)」や「直近の購入頻度・購入金額(RFM分析の要素)」などが用いられます。
・高い: 継続的な購入があり、累積の購買金額も多い、いわゆる優良顧客層です。
・中程度: 一定の購買はあるものの、頻度や金額が優良顧客ほど高くない層です。
・低い: 購入経験が一度きり、または極めて少なく、貢献度が低い層です。
この軸を設定する際のポイントは、貴社のビジネスモデルに最もフィットする指標を選ぶことです。サブスクリプション型ビジネスであれば「継続利用期間」、情報提供型のビジネスであれば「有料コンテンツの利用率」など、貢献度を表す本質的な指標を設定すべきです。
活動頻度軸(エンゲージメントの度合い)
活動頻度軸は、顧客が現在どれだけ企業との接点において活発であるか、すなわちエンゲージメントの度合いを示す指標です。これは主に、Webサイトやメール、アプリなどのデジタルな行動データから測定されます。
・高い: 直近でサイト訪問、メール開封、アプリ利用などのアクションが頻繁にある層です。
・中程度: 一定の活動は見られるものの、頻度や熱量が低い層です。
・低い: 長期間にわたりサイト訪問やメール開封などのアクションが見られない層です。
ロイヤリティが「過去の貢献」を示すのに対し、活動頻度は「現在の興味関心」を示す鏡のようなものです。ロイヤリティが高くても活動頻度が低い顧客は「休眠予備軍」として警戒が必要ですし、ロイヤリティは低くても活動頻度が高い顧客は「育成対象」として重点的にアプローチすべきです。
これらの2軸を組み合わせることで、顧客の過去と現在、そして未来のポテンシャルを包括的に評価することが可能になります。
9つのセグメント別:戦略と具体的なアプローチ
2つの軸で分類された9つのセグメントには、それぞれ明確な特徴があり、それに応じた最適な戦略とアプローチが存在します。すべての顧客に同じメッセージを送るのではなく、セグメントの特性を踏まえた「One-to-One」に近いコミュニケーション設計が重要です。
「優良顧客」セグメント(ロイヤリティ高 × 活動頻度高)
最も重要なVIP顧客であり、ロイヤリティも活動頻度も高い層です。
●戦略:
維持・強化。競合他社への流出を防ぎ、さらにロイヤリティを高める施策を優先します。
●アプローチ:
限定的な先行情報提供、専用の会員特典プログラム、パーソナルなサンキューメール、UGC(User Generated Content)を促すための活動依頼など。彼らの声を新商品開発やサービス改善に活かす仕組みも重要です。
「育成顧客」セグメント(ロイヤリティ低 × 活動頻度高)
まだ購入経験は少ないものの、頻繁にサイトを訪れたり情報をチェックしたりしている将来有望な顧客です。
●戦略:
コンバージョン(初回購入や本格利用)の促進。熱量が高い今、購買へのハードルを下げるアプローチを行います。
●アプローチ:
初回限定の割引クーポン、購買意欲が高まるような導入事例や成功事例の提示、利用方法のチュートリアルコンテンツの提供、無料トライアルへの誘導など。
「休眠予備軍」セグメント(ロイヤリティ高 × 活動頻度低)
過去に多く貢献してくれたが、最近は活動が見られない最も危険な顧客です。放置すると「離反顧客」になってしまいます。
●戦略:
再活性化。なぜ活動が停止したのかを推測し、関係を修復するためのきっかけを提供します。
●アプローチ: 「〇〇様、最近いかがですか?」といった個別感のある挨拶メール、過去の購入履歴に基づいたパーソナライズされた商品レコメンド、期間限定のカムバックキャンペーン、アンケートを通じた意見聴取など。
「離反顧客」セグメント(ロイヤリティ低 × 活動頻度低)
貢献度が低く、活動も見られない層です。コストをかけてまで追うべきか否かの判断が分かれます。
●戦略:
最低限のアプローチ。費用対効果が見合わない場合は、アプローチの優先度を下げることも選択肢に入ります。
●アプローチ:
コストを抑えた情報提供(例:全体メールマガジンへの含め)に留めるか、極めて魅力的なインセンティブ(例:大幅割引など)を用いた最後の呼びかけを行う。
その他のセグメント(中ロイヤリティ×中/低活動頻度など)についても、それぞれの位置づけに応じて、優良顧客への「引き上げ」や、離反顧客への「陥落阻止」を目的としたきめ細やかな施策を展開していきます。
9セグマップを実践するためのデータと分析ステップ
9セグマップは概念図で終わらせず、具体的な施策に落とし込むためのデータと分析ステップが重要となります。適切なツールと手順を踏むことで、その効果を最大化できます。
データの準備とツールの活用
9セグマップの分析には、主に以下のデータとツールが必要です。
●顧客属性データ:
氏名、メールアドレス、会員IDなど、顧客を特定するための情報。
●ロイヤリティデータ:
CRMやECサイトのシステムから得られる、購入履歴、購入金額、最終購入日などのトランザクションデータ。
●活動頻度データ:
MA(マーケティングオートメーション)ツールやアクセス解析ツール(Google Analyticsなど)から得られる、サイト訪問履歴、メール開封/クリック率、アプリの利用状況などの行動データ。
これらのデータを統合的に管理し、セグメント分けを自動化するためには、CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)ツールが非常に有効です。特に、顧客データを一元管理できる環境を整備することが、施策の迅速な実行と効果測定の土台となります。
9セグメント分類のステップ
1.軸の定義と閾値の設定:
貴社ビジネスにおける「ロイヤリティ」と「活動頻度」の最適な指標を決定します。そして、それぞれの軸を「高・中・低」に分けるための閾値(しきいち)を設定します。例えば、「ロイヤリティ高」を「累計購入金額が上位20%」とする、といった具体的な数値設定が必要です。
2.データの抽出とセグメントへの振り分け:
定義した閾値に基づき、保有する全顧客データを9つのセグメントに自動的、または手動で振り分けます。
3.セグメントの割合と特徴の把握:
各セグメントに属する顧客の人数(または割合)を把握し、その構成比を分析します。また、それぞれのセグメントの顧客が持つ属性(年齢層、居住地など)や行動の傾向(よく見るページ、購入しやすい商品など)を深掘りし、ペルソナに近いイメージを作り上げます。
4.施策の実行と効果測定:
前章で解説した各セグメントに応じた最適なアプローチを実行し、その施策が目標とするセグメント間の移動(例:育成顧客から優良顧客へ)を達成したか、KPI(重要業績評価指標)に基づいて効果を測定します。
このプロセスは一度きりではなく、市場や顧客の変化に合わせて定期的に見直し、PDCAサイクルを回し続けることが、9セグマップ活用成功の鍵となります。
まとめ・編集部のコメント
顧客戦略の精度を高める9セグマップの力
本コラムでは、顧客理解を深め、マーケティングの成果を最大化するためのフレームワークである「9セグマップ」について、その構成要素から具体的な戦略、実践ステップまでを解説いたしました。
9セグマップは、ロイヤリティ(過去の貢献度)と活動頻度(現在のエンゲージメント)という2軸で顧客を9つのグループに分類することで、「誰に」「どのような」アプローチをすべきかを明確にするための戦略的な地図となります。
●優良顧客は維持・強化のアプローチ。
●育成顧客はコンバージョン促進のアプローチ。
●休眠予備軍は再活性化のアプローチ。
それぞれのセグメントに合わせた適切な施策を実行することで、顧客一人ひとりの状態に最適化されたパーソナライズド・マーケティングを実現し、限られたリソースの中で最大の効果を追求することが可能となります。
9セグマップの導入は、単なるデータの分類に留まりません。それは、顧客への理解を深め、より長期的な関係構築を目指すための顧客中心の戦略立案へと繋がる重要なステップです。ぜひ貴社のマーケティング活動において、このフレームワークを導入し、顧客とのエンゲージメント強化にお役立てください。
編集部のコメント
デジタルマーケティングが高度化する現代において、「全てのお客様」に向けた一律のメッセージは、もはや効果的とは言えません。顧客は、自分に向けられた、自分に「関係のある」情報のみを選別して受け取ります。
今回解説した「9セグマップ」は、この個別のニーズに応えるための土台作りに欠かせない手法です。特に、過去の貢献度が高いにも関わらず活動が低下している「休眠予備軍」を見つけ出し、適切なタイミングで関係修復のアプローチをかけることは、新規顧客獲得にかかるコストを考えると、極めて費用対効果の高い戦略と言えます。
貴社のビジネスをさらに成長させるためには、「なんとなく」の施策から脱却し、データに基づいた「戦略的な顧客育成」への転換が不可欠です。9セグマップを羅針盤として、顧客の真の状態を把握し、一歩先を行くマーケティング施策を実行されることを推奨いたします。






