PRM(Partner Relationship Management)の全貌と導入効果

PRM(Partner Relationship Management)の全貌と導入効果
企業のビジネス拡大において、代理店や販売パートナーとの連携は欠かせない要素となっています。しかし、多くの企業がパートナー企業との関係構築に課題を抱えているのが現状です。情報共有の不足、営業活動の可視化不足、パートナーのパフォーマンス管理の難しさなど、解決すべき問題は山積しています。こうした課題を解決する手法として注目されているのが、PRM(Partner Relationship Management)です。
PRMは、メーカーと代理店といったパートナー企業との連携を良好にすることで価値を最大化する手法であり、海外では既に広く浸透しています。日本国内ではまだ認知度が高くないものの、グローバル化とデジタル化の進展により、その重要性は確実に高まっています。本記事では、PRMの基本概念から具体的な機能、導入のメリット・デメリット、そして実際の導入事例まで、包括的に解説していきます。
PRMとは何か―その概念と市場動向
PRM(Partner Relationship Management)とは、企業が代理店や小売店などのパートナー企業と長期的に良好な関係性を築くための手法を指します。この概念はCRM(顧客関係管理)と類似していますが、対象が顧客ではなくビジネスパートナーである点が大きく異なります。PRMは、製品やサービスを販売・配布するために必要なパートナーのネットワーク全体を管理し、相互利益のある関係を構築することを目的としています。
PRMは一般的に二つの主要な要素で構成されています。一つ目は戦略です。これは企業が自社のパートナーネットワークを最大限に活用するための長期的な計画であり、パートナーとの関係をどのように築くか、何を提供するか、どのように支援するかなどの要素が重要なポイントとなります。二つ目はテクノロジーで、これはPRMツールとして提供されるソフトウェアです。PRMツールは、パートナーとのコミュニケーションを管理し、リードを追跡し、取引を記録し、パフォーマンスを測定するための機能を備えています。
PRMツールは、パートナーデータの管理、パートナーポータルの設定、リード管理、パートナーマーケティングの支援、販売予測の提供など、多くの機能を提供します。これにより、企業はパートナーとの関係を深化させ、ビジネスの成功につながるパートナーシップを強化することができます。また、PRMツールはビジネスパートナーシップをデジタル化し、リアルタイムでの情報共有を可能にします。
PRMが注目されている背景には、グローバル化とデジタル化の進展があります。グローバル化の進展により、企業が国境を越えてビジネスを展開する機会が増加しました。これにより、製品やサービスの販売と配布におけるビジネスパートナーの役割がより重要になっています。デジタル化の進展は、情報を迅速に共有し、リアルタイムでのビジネスの発展を実現させることに成功しました。しかし、ビジネスの国際化により、ビジネスパートナーとのコミュニケーションと協調がより重要で複雑になったのが課題です。
市場規模について見てみると、PRMの市場規模は2020年に548.2億米ドルと評価され、2021年から2028年にかけて16.2%のCAGR(年平均成長率)で拡大すると予想されています。パートナー企業との関係構築、チャネル管理コストの削減、既に利用しているパートナー管理システムとの共生などが市場成長を後押ししています。一方で、プライバシーやセキュリティの問題が成長を妨げる要因になると予想されています。これらの課題に対応するために、企業はビジネスパートナーとのリレーションシップをより効果的に管理する方法を模索しており、PRMの重要性が浮き彫りになっているのです。
PRMとCRM・SFAの違いを理解する
PRMツールは、しばしばCRMやSFAと混同されることがあります。しかし、これらは明確に異なる目的と機能を持っており、その違いを理解することが重要です。まず、PRMとCRMの違いについて見ていきましょう。CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)は主に企業とそのエンドユーザー、つまり顧客との関係を管理するためのツールです。顧客データの管理、販売パイプラインの追跡、顧客対応の最適化などが含まれます。CRMは個々の顧客とのコミュニケーションを助け、関係を築き、顧客満足度を向上させることを目指します。
一方、PRMは企業とそのビジネスパートナーとの関係を管理します。PRMシステムは、パートナーのレコードを保持し、パートナーとのコミュニケーションを管理し、パートナーのパフォーマンスを追跡します。重要なのは、パートナーが製品やサービスを成功裏に市場に推進するのを助けるために、適切なリソースとサポートが提供されることです。PRMとCRMの主な違いは、それぞれが対象とする関係性と、それにより得られる価値にあります。CRMは直接の顧客関係に焦点を当て、個々の顧客とのコミュニケーションを最適化し、顧客満足度を高め、売上を増加させることに重きを置きます。一方、PRMはパートナー関係に焦点を当て、パートナーが製品やサービスを効果的に販売・配布できるように支援することに重きを置きます。
次に、PRMとSFA(セールスフォースオートメーション)の違いについて説明します。SFAはセールスプロセスの自動化に重点を置いたソフトウェアです。SFAは営業チームがリードを管理し、商談を追跡し、販売予測を作成するのを助けます。その目的は、営業プロセスを効率化し、販売活動を最適化し、最終的には売上の増加を実現することです。したがって、PRMとSFAの主な違いは、それぞれが対象とする関係とプロセスです。PRMは企業とそのビジネスパートナーとの間の関係に焦点を当て、パートナーとの連携を強化しようとしています。一方、SFAは企業の内部、特に営業チームのプロセスと活動に焦点を当て、営業効率と生産性を向上させることを目指します。
PRMの手法としては、ソリューションの提供、情報の共有化、連携の向上、現状認識、サポートの提供などが挙げられます。これに対してCRMは、ソリューション、担当者の明確化、現状把握、顧客獲得、ニーズ発掘を目的としています。SFAでは、リード管理、商談の追跡、販売予測の作成、顧客獲得などが主な手法となります。これらは異なる目的を持ちながらも、企業の成功にとって両方とも重要な役割を果たしています。適切にこれらを統合して活用することで、全体のビジネス戦略を強化し、競争優位性を保つことができます。
PRM導入のメリットとデメリット
PRMツールの導入には、多岐にわたるメリットがあります。特に売上データやマーケティングデータを分析し、経営方針を判断するのに非常に有用です。PRMは、企業とパートナー企業との連携を深化し、共同でビジネスを展開していくためには欠かせないツールと言えるでしょう。まず、効率的なパートナー管理が可能になります。パートナーとの関係管理は、従来の手作業や複数のシステムに依存する方法では時間も手間もかかり、統一的な管理が難しいものでした。PRMツールの導入により、これらの課題は一気に解消します。
一元管理の実現により、パートナーの情報、契約内容、販売実績などを一元管理することで、必要なデータに素早くアクセスできます。業務のスピードが向上し、迅速な意思決定が可能になります。また、PRMツールを用いれば、パートナーへのトレーニングや情報共有も一元化できるため、コスト削減と教育の質の向上が期待できます。さらに、パートナーの販売実績や貢献度に応じて、インセンティブを柔軟に設定することが可能です。これにより、パートナーのモチベーション向上と、より効果的な業務運営が実現します。
データ駆動の意思決定が可能になることも大きなメリットです。PRMツールを活用することで、パートナービジネスでもデータを重視した意思決定が可能となります。パートナーの売上やアクティビティをリアルタイムで分析し、トレンドや問題点を迅速に把握することができます。AIや機械学習の技術を組み込んだPRMツールならば、未来の売上や需要の予測が可能となります。これにより、戦略の立案がより精緻に行えます。各パートナーとの取引の投資対効果(ROI)を計測し、最適化することができるため、コスト効率の良いパートナーシップの構築が可能になります。
カスタマイズ可能なマーケティング支援も重要なメリットです。PRMツールの導入により、パートナーごとに異なるマーケティング支援が容易になります。各パートナーのターゲット市場に応じた、カスタマイズされたマーケティング資料の提供が可能になります。パートナーの販売実績や顧客の反応に基づいて、プロモーションの戦略を最適化することができます。PRMツールを通じて、企業とパートナーとの共同マーケティングの企画や実施がスムーズに進行します。これにより、市場へのアプローチが一層強化されます。
一方で、PRM導入にはデメリットも存在します。まず、導入コストと維持費用が挙げられます。PRMツールの導入には、ハードウェアやソフトウェア、カスタマイズの初期費用が必要です。また、システムの保守やアップデート、サポートにも継続的な費用がかかるため、長期的なコストが発生します。コスト面の問題を解決するためには、導入前の十分な費用対効果の分析と、適切な予算の確保が不可欠です。また、維持費用についても、将来的なシステムの拡張や変更に対応できる柔軟な計画が重要となります。
運用の複雑性も無視できないデメリットです。PRMツールの操作は、専門的な知識とスキルが求められる場合が多く、スタッフのトレーニングが必要になることがあります。さらに、既存のITシステムとの統合が必要になると、技術的な障壁も存在します。運用の複雑性に対処するためには、導入前の技術評価と、必要な教育プログラムの設計が重要です。適切なトレーニングとサポート体制の整備を通じて、スムーズな運用が実現できるよう努める必要があります。
最後に、パートナーの協力が必要である点もデメリットとして挙げられます。パートナー企業がツールの導入に消極的であれば、その効果を最大限に引き出すことが困難になります。情報共有のルールやセキュリティの保護も、共同で検討する必要があります。この課題を解決するためには、パートナー企業とのコミュニケーションを深化し、共通の目標とビジョンを共有することが重要です。また、定期的な評価とフィードバックを通じて、連携を強化し、共同での成長を促進することが求められます。
PRMツールの主要機能と選び方
PRMツールには様々な機能が搭載されており、それぞれがパートナーとの関係強化に貢献します。主要な機能としては、パートナーポータル、営業支援、トレーニングと認定、パフォーマンス管理、報酬とインセンティブ、リード・営業管理などがあります。パートナーポータルは、企業とそのパートナーが情報を共有し、コラボレーションを促進するための中心的な場所です。ここでは、企業が独自のブランドとデザインを反映させることができます。パートナーは、このポータルを通じてリソースにアクセスできますので、企業との連携が可能です。
営業支援機能は、パートナーに対してプロダクト情報やプロモーション情報、営業資料などのリソースを提供します。これにより、パートナーは顧客に対して適切な情報を提供し、営業チャンスを最大限に活用することができます。営業支援機能には、営業プレゼンテーションの資料や競合分析、価格情報なども含まれており、パートナーがより効果的な営業活動を展開できるようにサポートしています。トレーニングと認定機能では、オンライントレーニングや認定プログラムを提供し、パートナーが企業の製品やサービスに関する知識を習得できます。トレーニングには、製品知識や業界動向、営業スキルの向上を目的としたコンテンツが用意されており、パートナーが自分のペースで学習できる点が特徴です。
パフォーマンス管理機能は、パートナーのパフォーマンスを追跡し、評価する機能を提供します。売上データや営業活動の統計情報をリアルタイムで閲覧できるダッシュボードが含まれており、企業はツールを使ってパートナーの成果を客観的に評価し、適切なフィードバックやサポートを提供できます。効果的なパフォーマンス管理を通じて、企業はビジネスの成長を加速させ、競争力を向上させることができます。報酬とインセンティブ機能では、パートナーが達成した成果に応じて報酬やインセンティブを提供します。パートナーが目標を達成するたびにポイントが付与され、これを特典や報酬に交換できるようになっています。
PRMツールを選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、PRMツールを導入する目的を明確化することが最も基本的で重要です。現在起きている問題は何か、PRMツールを使用することでその問題は解決できそうなのかから検討する必要があります。解決できそうだとしたときに、どのくらいの期間をかければ解決できそうなのか、そのツールを運用するためにどのくらいの人材と教育が必要なのか、といった点を分析しなければいけません。導入してから想定と違ったという事態を避けるため、現在の課題と将来イメージをつなげるツールとしてPRMツールが機能するような体制を整えていく必要があります。
次に、パートナーの育成・サービス理解促進ができるかどうかを確認しましょう。パートナー企業との最重要課題は、企業間のサービス内容を確実に理解することにあります。サービス内容を深く理解し、それを正確に顧客に伝えることができなければ、結果としてパートナー企業の受注成果は上がらず、効率の良い営業展開が難しくなるからです。PRMツールを使用することでパートナー企業にサービス内容の理解を深めてもらい、よりスムーズに営業展開できるようにしていくことが大切になります。
パートナー企業内の個人単位で管理ができるかどうかも重要なポイントです。実際に現場で営業活動を行っているパートナー企業内の営業担当者がどのような活動をし、またどのくらいこちらのサービス内容を理解しているかが、受注成果に大きく影響します。契約管理や案件管理はもちろん、資料の閲覧状況やチャットなどのデータを一元管理し、それを分析できるツールであれば、個人の活動進捗が把握可能です。外部CRMと連携ができるかどうかも確認すべきポイントです。導入したPRMツールが外部CRMとの連携不可だった場合、作業が二度手間になったり、入力間違いが理由でデータリンクがはかれなくなったりする可能性があります。
最後に、機能とコストのバランスが取れているかを確認しましょう。PRMツール導入の目的と照らし合わせたときに、その機能が本当に必要なものなのか、その機能に予算をかけてまで導入しなければならないのかなどを再度分析する必要があります。機能が複雑になったり、ツールを効率化させるための入力作業が膨大になったりするのであれば、担当者の作業負担が増してしまいます。PRMツール導入にあたっては、機能とコストのバランスが取れているかを丁寧に確認しながら進めるようにしましょう。
国内外のPRMツールと成功事例
国内のPRMツールは数こそ少ないものの、優れた製品が登場しています。Partner Propは、パートナーとの営業活動や契約、チャットなどのデータを数値化・一元化管理するためのPRMツールです。パートナーの営業進捗を一元管理することで、顧客情報や商談状況をリアルタイムで把握できるようになっています。資料の権限管理・ログの追跡取得が可能になるため、誰がいつどんなデータを閲覧・ダウンロードしたのかなどをパートナーごとに管理することも可能です。パートナーとの契約情報なども管理できるため、契約情報をはじめとした営業活動にまつわる情報をデータベース化できます。
Partner Successは、代理店管理・情報共有・データ活用の仕組みを構築し、代理店販売で業績を伸ばすPRMクラウドサービスです。契約した代理店のうち、売上を上げている代理店は全体の2割といわれる中、非アクティブな残り8割の代理店に対して適切な支援を行い、代理店ビジネスの成果を出すことを目的としたツールです。代理店向けにポータルやメールの一括配信を行い、代理店との情報共有を円滑化します。代理店担当者の情報閲覧ログから、どの資料をどの代理店担当者が閲覧したかを把握・分析し、代理店営業のポテンシャルを可視化しながら適切なフォローを行います。
Hiwayは、メーカー企業と販売代理店等のパートナー企業が共同営業を行う時に必要となる情報共有とコミュニケーションを円滑にし、営業活動の効率化を支援することを目的としています。アカウントマッピング技術を用いて、SalesForceのような顧客情報管理ツールのデータを安全に共有・分析・一元化しているところが特徴的です。これにより、多重データをチェックし、共同ターゲット企業リストを生成することで、営業担当者個人の能力に頼る業務の現場課題に向き合っています。CoPASSは、代理店活用に必要なデータを一元管理し、パートナー戦略を高度化させるPRMツールです。顧客の契約管理や案件管理、実績の集計・分析、コンテンツ共有・チャット連携まで、代理店に係る一連のプロセスを一つのプラットフォーム上に集約します。
海外のPRMツールも多数存在します。PartnerStackは、パートナープログラムをスケーラブルに運用することを支援するPRMツールです。パートナーの募集から育成、管理までの一連のプロセスをデジタル化し、自動化することで手間と時間を削減します。impact.comは、パートナーシップ自動化ツールであり、アフィリエイト、インフルエンサー、戦略的ビジネスパートナー、モバイルアプリ、出版社など、あらゆるタイプのパートナーシップの拡大が可能です。Salesforce PRMは、世界No.1のセールスプラットフォーム上に構築できるインテリジェントパートナーアプリであり、パートナー、卸売業者、リセラー、代理店などの商流に関わるステークホルダーを統合的に管理することができます。
実際の導入事例も参考になります。株式会社JTBは、紙文化からの脱却を目指し、業務効率を向上させています。運用をSalesForceで一元化し、営業プロセスを統一することで、従業員50人分のコストカットを行うことができただけでなく、業務の効率化により顧客の利便性も高まりました。株式会社LIFULLは、人員の増加を抑えたまま新規受注会員数を前期対比300%に伸ばすことができています。組織を統合し、SalesForceを社内のインフラとして利用することで、営業の経験則をモデル化し、アポイント取得率や受注率を改善しました。
Adobe株式会社は、パートナーとより効果的なコミュニケーションを取るために、独自のデジタルビジネスモデルを反映させたSocial on Demandの立ち上げを成功させました。環境設定ベースのチャネル電子通信を採用し、新規情報をオンデマンドとして複数の言語で配信しているため、どこの地域にいるパートナーに対しても最新情報を配信することが可能になりました。Starling Bankは、Impact Partnership Cloudを導入することでプロセスを合理化し、手作業をなくしたため、パートナーからの様々な申請を安定的に管理し、パートナーが新規顧客を獲得するための時間を生み出せるようになりました。Love, Bonitoは、PRMツールに備わっているポータルで、アジアへの発信力を持ったアフィリエイトチームを見つけ、パートナービジネスを行うことで、アジアでの認知度向上に成功しています。
編集部より
PRMは、企業とパートナー企業との連携を強化し、共同でビジネスの成長を促進するための重要なソリューションです。デジタル化とグローバル化が加速する現代において、パートナービジネスの重要性はますます高まっています。しかし、日本国内ではまだPRMの認知度が低く、多くの企業がパートナー管理に課題を抱えているのが実情です。
PRMツールの導入により、パートナーポータル、営業支援、トレーニングと認定、パフォーマンス管理、報酬とインセンティブ、リード管理など、多様な機能を活用することができます。これらの機能を効果的に使うことで、企業はパートナーとの関係を強化し、効率的な営業活動を支援できます。導入にあたっては、コストや運用の複雑性、パートナーの協力という課題もありますが、適切な計画と準備により、これらの課題を克服することが可能です。
特に重要なのは、PRMツール導入の目的を明確にし、パートナー企業内の個人単位での管理や外部CRMとの連携など、実務に即した機能を持つツールを選定することです。また、パートナー企業との共通の目標とビジョンを共有し、定期的な評価とフィードバックを通じて関係を強化していくことが成功の鍵となります。海外では既に多くの成功事例があり、日本企業も今後PRMの導入を加速させていくことが予想されます。パートナービジネスを科学し、仕組み化することで、企業は持続的な成長を実現することができるでしょう。






